遠くの土地を読むことは、いま暮らす場所から離れることだけではないはずです。星野道夫がアラスカの自然や人々の暮らしを綴ったこの随筆集を、小坪書房では、自分の足元に流れている時間を考える一冊として置きます。風景を、訪問先の印象だけで終わらせないための読書です。

読む前と読んだあとに、自分の町で季節を感じるものを一つずつ思い浮かべてみてください。木の葉、日が落ちる時刻、通りで目にする服装。遠い土地と身近な町を同じだと考える必要はありません。その違いに触れることが、自分の見慣れた変化をもう一度見る機会になります。

三冊の棚の外側へ、少し距離を広げたいときに薦めます。持っていく旅行の予定がなくても、机の上に旅の本を置くことはできます。読んでいる場所はそのままで、風景に含まれる時間の幅を変えてみる。急いで答えを探さず、折に触れて開きたい一冊です。