身近なものを撮ることと、身近なものをよく見ることは、同じようで少し違います。川内倫子の写真集『うたたね』を、小坪書房では、いつもの風景に向けている視線を確かめる一冊として選びます。日常の小さなものに目が留まる一方で、やさしさだけでは言い切れない、生の気配にも触れる本です。

写真を言葉に置き換える前に、一枚の前で少し待ってみてください。自分は光に引かれたのか、形なのか、それとも何かを思い出したのか。すぐに理由が分からなくても構いません。読む側の記憶や、その日の調子が入り込む余地も、写真集を手元に置く楽しみになります。

この棚では、言葉で想像し、場所について考えたあとに置きました。説明を増やすのではなく、見るための時間を取り戻す役割です。本を閉じたあと、机の上や窓辺のどこに目が向くか。次の一枚を撮ることより先に、そこへ立ち止まるきっかけとして。